第10回 相手の立場になって考える
多様な人材が活躍するためには、組織全体で意識改革を行い、サポートをしていくことが必要となってきます。
子育てに積極的に関わる男性を「イクメン」と呼ぶのに対し、産休や育休などを含んだ個人のキャリアと人生を尊重し、支援する上司(経営者・管理職、男女を問わない)のことを「イクボス」と言います。仕事と生活の両立が図りやすい環境の整備に努めるイクボスが増えれば、組織だけではなく、社会全体も変わっていくのではないでしょうか。
そこで今回は、人間科学部人間科学科 早坂 信哉 教授より寄稿いただきました。
教職員が仕事と生活の両立を図るために大切なことは、優しさをもってお互いに相手の立場になって考える、ということだと考えています。
人間科学部の教員は30代から60代まで幅広い世代の先生方が在籍しています。それぞれの世代において生活における課題が変わってきます。就学前のお子さんを育てている先生は保育園への送り迎え、もう少し大きなお子さんをお持ちの先生はお子さんの受験、ご自身のお子さんの卒業式、入学式があります。さらには高齢のご両親の介護の問題も発生してきます。また年齢が上がってくると教員自身さまざまな体調の不調に見舞われることもあります。
釈迦に説法かもしれませんが、そうした折は、教員はお互いに相手の立場になって考え、家庭や生活のためやむを得ず遂行が不可能な校務は他の教員がお互いにカバーすることが大切です。一人で抱え込んで自身の生活を犠牲にして滅私奉公をするようでは勤務も長続きしません。ただ、世代が違ったり立場が異なると相手のご家庭や生活の大変さが理解しにくいこともあります。そこは十分に想像を働かせないといけないと思いつつ、心の余裕がないと相手への配慮ができないこともあります。
ありがたいことに人間科学部では「大変な時はお互い様」の精神で教員同士が自然と快く校務をカバーしあってくださっています。学部長の仕事としては一部の教員に業務が集中しないように調整することに徹しています。
教員自身の、仕事と生活の両立は学生への教育上も必要なことと考えています。学生は教員から教科のことだけでなく、その人生観や考え方、生き方など様々なことを教員から吸収して学んでいきます。仕事のためには生活を犠牲にする、また逆に生活に比重を置きすぎて仕事がうまく回っていないといったライフワークバランスが欠けることがあると、学生に対して良いロールモデルであるとは言えません。教員が心地よく勤務できていないと、学生にもそのことがすぐに伝わり良い授業が展開できません。教育上の観点からも教員のライフワークバランスはとても重要と考えています。
さらに「イクボス」自身のライフワークバランスも重要だと思っています。管理職の業務代行は困難なことも多く、業務が管理職本人に集中してしまい業務過多になりがちです。なんでも学部長、学科主任へ振る、という雰囲気が少し変わればいいなと最近感じています。