第11回 「 時間の使い方 」
多様な人材が活躍するためには、組織全体で意識改革を行い、サポートをしていくことが必要となってきます。
子育てに積極的に関わる男性を「イクメン」と呼ぶのに対し、産休や育休などを含んだ個人のキャリアと人生を尊重し、支援する上司(経営者・管理職、男女を問わない)のことを「イクボス」と言います。仕事と生活の両立が図りやすい環境の整備に努めるイクボスが増えれば、組織だけではなく、社会全体も変わっていくのではないでしょうか。
そこで今回は、理工学部 電気電子通信工学科 柴田 随道 教授より寄稿いただきました。
今回、ワークバランスについて思い巡らすなかで、聖路加国際病院名誉院長だった日野原重明さんが、晩年小学校を訪問して行われたという「いのちの授業」のことを思い出しました。「命とは、人間が持っている時間のこと」「この命(時間)をどのように使うかが大事なのだよ」。100歳を越えて活動を続けられた日野原さんの言葉に重みを感じます。
さて、私は10年ほど前まで企業の研究所に長く勤務していました。振り返ってみますと、若い頃は自分が専門とする技術を「ものづくり」や「ことづくり」に活かそうと1日中没頭していた時期もありました。その後、二人の子を育て、職場でもいろいろな立場の役職を経験するなかで、自分の限りある時間の使い方について考えるようになったと思います。最近は親の介護(母が90歳を迎え元気でおります)の時間を見つけるのに苦慮していますが、年とともに人の果たすべき役割は移ろい、その人の時間の使い方も変化するように思います。この企画の第6回(タイバーシティ通信VOL.8)で住田暁弘学生支援部長が「人が生涯を通じて担う多様な役割」を「キャリア・レインボー」なるモデルを引用して紹介され、その役割間での葛藤の整理と優先順位付けの重要性を指摘されている記事を改めて拝読して、なるほどと思いました。
以前の職場で2~3か月に一度、様々な企業の経営トップをお招きして話を聞く会があり、私もそれに何度か出席しました。その中で数名の講師がご自身の時間の使い方について言及されていましたが、ある講演者が「私は、自分の時間を三等分して三分の一をお客様の対応の為に、三分の一を社員の為に、そして残りの三分の一を自分の為に使うことにしています」と言われたのが妙に納得できて印象に残りました。大企業の経営トップですから組織としてのビジョンを掲げ、その達成に気を配り、日々様々な案件に対処し、課題の整理に暇がないのではないかと思いましたが、そのような中でも自分の時間の使い方としてとてもシンプルな行動指針をもって自身が担う役割の優先順位やバランスをマネージしているというお話でした。勿論、けっして一日を三等分して全てをこなすということではなく、ある日を一つのことに費やしたならば他の日に別のことの埋め合わせをするようなこともあると思います。この話を聞いて、私も自分の役割を3つぐらいに分けてその時間配分を考える癖をつけようとしてきました。自分の時間の使い方に対するシンプルな理念と指針を持つことが自身のワークバランスを考えるうえでとても参考になると思いましたのでご紹介した次第です。