第10回
「窓」は不定期連載のコラム欄です。窓を開けて風通しを良くしたいという思いから「窓」と名付けました。ダイバーシティに対する思い、ダイバーシティに対する期待等、皆さまからのご投稿をお待ちしております。推進室ではダイバーシティ関連の書物や学外のフォーラム、他大学の取組みなど、幅広く情報収集しておりますので、これらの情報もこちらにてご紹介してまいります。
ある日の横浜キャンパス学生食堂
本学の課外活動団体の中枢を担う学生団体連合会(以下、学団連)という団体があります。学団連の活動は課外活動団体全体、大学、大学行事との連携、独自の企画立案など多岐にわたっています。横浜キャンパスには学生団体連合会横浜分室があり、学団連としての活動の他、地域との連携という横浜キャンパスならではの活動が1年を通じて行われています。
先日、2時限目が始まった頃、横浜分室員(以下、分室員)に先導されたお子さん、大人たち20名超がキャンパスに入構。キャンパスから5分ほど離れた子育て支援施設の利用者、スタッフの訪問でした。学生食堂(以下、学食)に準備をした席では、ちびっこの鳴き声、笑い声の中、にぎやかに食事を摂る一方で、分室員が学食の利用について説明をしながら交流をしていました。
この企画は、昨年末、分室員と施設がコンタクトをとったことがきっかけで、コロナ前には学食を利用されていた地域の方々が、コロナ時代に突入し、一般の利用が途絶え、その後、“学食は利用できるの?利用していいの?どうやって利用するの?”であれば、横浜分室が案内します、というところから実現しました。横浜キャンパスの学食は、11時の営業開始から2時限目終了までは比較的席にも余裕があること、土曜日は利用者も激減するため地域からの利用は推奨したいのですが、学外者から見て、キャンパスに入構し、利用するまでの一歩が難しいという気づきがありました。
地域との活動はダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンにも通じるように見受けます。コロナ以降、課外活動は厳しい活動制限を受け、乗り越え、その時できること、資源を活用し活動を続け、オンライン、ハイブリッド、完全対面と毎年変わる活動形態に順応してきました。その様子を見ていると、彼らは学内外、多種多様な人々と関わり、いくつの窓を開け、風を通し、自ら楽しみ、ネットワークを築いてきたのでしょうか。窓の数ではなく、窓に向き合う創意工夫と姿勢なのだと、彼らの活動から学ぶことの多い数年でした。
利用される方々の席を準備する際、近くに座っていた4人グループの学生さんに、“お子さんの声がにぎやかになるけれど大丈夫ですか?”と声をかけたところ、“大丈夫です、むしろ僕たちが邪魔ですか?”と。保全林から冬晴れの木漏れ日が注がれる学食で、突然起こる多様性を受け入れてくれた素敵な学生さんとの出会もあった学生食堂でした。
(投稿者:学生支援課・金谷朗子)
生活にとけ込んだあたりまえの思いやり
本学に着任する以前はマレーシアの国立大学で教員をしていました。マレーシアは多民族国家として知られ、人口のおおよそ7割がマレー系、2割が中華系、1割がインド系とその他で構成されており、教室にいる学生達の顔を見渡すと、確かにそのような割合でした。
日本では一般的に「盆暮れ正月」が帰郷して大切な家族と過ごす時期ですが、マレーシアにはそれが3民族分あり、外国人の私にとってはやたらと多い祝日を満喫していました(その代わり1月1日を祝う慣習はなく、日本の元旦は平日として普通に授業をしていました)。民族、宗教、価値観、食べ物や生活習慣などが異なる人々が混ざり合い、同じマレーシア人として学び、働き、国を支えていく。クラスの学生達もお互いを理解し、尊重しながら、小さい頃から染みついている「付かず離れず」の絶妙なバランスで日々の大学生活を送っているように私には見えました。それぞれの大事なものやことを慮り、自分だったらどう思う?どうされたら心地よい?と想像を働かせながら自分事のように捉えて自然に接してあげる。ダイバーシティが大事なのである!などとは殊更に言わず、お互いへの思いやりが生活に溶け込んでいる、そんな国で私は、やはり付かず離れずのマレーシア人の同僚や学生達の優しさに助けられながら気づけば10年近くお世話になってしまいました。
翻って、海外からの留学生以外は(ほぼ)全員が日本人である同じ民族、という都市大の中でダイバーシティを肌で感じる機会はそう多くはありません。そのため特に宗教的なこととなると想像することが難しく、必要以上に身構えてしまうこともあると思います。ただ、こちらが分からないことくらいは彼らも分かっています。何が必要で何が不要か、はっきりと聞いてあげて、さらりと準備してあげるのがよいかなと思います。豪華な施設やラウンジのようなスペースなど、全く必要ありません。我々の日常生活にフッと溶け込むような優しい配慮や空間を用意してあげられる、そんな大学であったら素敵だなと思います。
(投稿者:都市生活学部・斉藤)