第5回

多様な人材が活躍するためには、組織全体で意識改革を行い、サポートとしていくことが必要となってきます。上司(イクボス)が、職場でともに働く部下に対して仕事と生活を両立しやすい職場環境づくりを行い、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむ。そうしたイクボスが増えれば、組織だけではなく、社会全体も変わっていくのではないでしょうか。そこで今回は、野中 謙一郎 副学長より寄稿いただきました。

今日では「ワークライフバランスへの合理的な配慮」は必須です。研究面でも対応が進み、例えば、科研費申請書では「研究活動を中断していた期間がある場合にはその説明などを含めてもよい。」という記述がありますし、私立大学等改革総合支援事業でも「ライフイベントによって研究活動の中断を余儀なくされた専任教員へのサポート」が申請の必須要件です。学内でも、重点推進研究の育児休業による研究計画変更も認めています。このように、制度は整ってきていますが、それを無理なく実現できる職場になっているのでしょうか。

私の周りでも、子育て真っ最中の若手の先生が複数おられます。授業や学生対応等で十分に大変なのに、論文も執筆しながら学会活動もこなしていて、本当によくやっていると感心します。研究室の学生でも、実は家族の介護で時間が自由にならない場合もあるので注意が必要です。これらは、日ごろから話をしてわかる事が多く、コミュニケーションと信頼関係が重要なのだと思います。

教職員がパフォーマンスを維持しながらワークライフバランスを取るには、やはり業務の見直しや改革が必要です。コロナ禍もあり本学でもオンラインや電子申請が進んだのは本当に良いことです。それでもまだ、時代の変化にそぐわない「業務」が沢山ある様に思えてなりません。聖域を設けずに見直す必要があります。

管理職に関わることを挙げると、大学の会議時間の長さは注意が必要です。企業では上長が部下に個別に指示を出し報告を受けるだけですが、大学では教授会や教室会議など構成員全員が参加して皆で議論します。私も若手の頃は夜まで続く会議に連日の様に参加していました。これでは、会議にくたびれ果てて、残務で長時間労働のあげく、家族にも学生にも迷惑をかけるのは当然です。会議での議論は大学の自治で重要ですが、テーマ・メンバー・時間管理は議長次第です。近年はガバナンス強化で大学方針への対応を求められることが増えたと思いますが、部局長の先生方にはその狙いをより正確にご理解いただき、合理的な対応をお願い申し上げます。

私自身も、会議で手際のよい司会や的確な発言をする先生方には、今でも大変貴重な勉強させて頂いています。ワークライフバランスの実現のためには、管理職の不断の工夫と、教職員のスマートな行動がますます求められるのだと思っております。