第8回 理想的な「イクボス」像を目指し、『お互いが相手への思いやりを大事に』

多様な人材が活躍するためには、組織全体で意識改革を行い、サポートとしていくことが必要となってきます。上司(イクボス)が、職場でともに働く部下に対して仕事と生活を両立しやすい職場環境づくりを行い、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむ。そうしたイクボスが増えれば、組織だけではなく、社会全体も変わっていくのではないでしょうか。そこで今回は、鳥羽 幸太郎 事務局長より寄稿いただきました。

今から遡ること30年以上前の本学(当時は、武蔵工業大学)での状況ですが、既に仕事と家事を両立している複数の女性教職員が在職されていました。仕事と家事の両立に努力されている女性教職員の大変さを少なからず感じておりましたし、周囲の教職員が、そのような状況を察して対応していた記憶もあります。各種休業に関する制度は、今でいう「イクボス」の存在感とともに発展途上であったと思いますが、身近で応援している「イクボス」を含めた教職員の姿も見受けられていた時代でした。

さて現在は、法制度も、法令で定められる権利も充実してきていますが、多様性の時代で人の価値観も様々ですので、「イクボス」としては、複雑で難しい対応もあるのかもしれません。現状の「イクボス」は、男女問わずに育児のみならず介護を含めてのワークライフバランスに対応する立場であると思います。家族との関わりを大切にしたいと考える教職員と、その方を支える周囲の教職員、その相互の気持ちや行動を大事にしなければなりません。「イクボス」自身が両者の立場になる可能性もあります。教職員のキャリアと人生を応援し、仕事と家事の両立が図りやすいように環境整備に努める「イクボス」は、一体どうあるべきなのか。

その解は、一つではないと思います。また、関係者間ではできる限り感情を露わにすることなく、冷静に意見を出し合って、穏やかに解を見出すことが必要であるとも思います。仕事をする義務と各種の制度や権利取得などとの両立をどのように周囲にも理解を得て、協力してもらうのかという観点に、当事者も「イクボス」もお互いが相手の立場で考えることができたら、周囲の教職員もきっとその状況を応援したいと思うのではないでしょうか。「相互に歩み寄りと思いやりの気持ち」を大事にして対応していただければ、必ず見出せる解があると思います。

我が身を振り返ると、家族にあの時もっと対応しておければ良かったと思うことが実は幾つも思い浮かんでまいります。時は既に遅しなのですが、その自戒の念も込めて、職場の皆さんのキャリアと人生を少しでも応援したいと思っております。縁あって本法人に採用された同じ職場仲間なのですから、皆さんが仕事と家事との両立を図りながら、目指すライフスタイルを豊かに送ることができるように、引き続き環境整備にも努めて参りたいと思っております。