一人の母として、一人の大学人として、その時々のバランスを模索しながら、人生を楽しみたいと考えています。

ロールモデル
建築都市デザイン学部 都市工学科
小野村 史穂 准教授

経歴
東京都立富士高等学校、東京工業大学工学部土木学科卒業
東京工業大学大学院修士課程修了
スウェーデン王国ヨーテボリ大学Ph.D.
気象庁気象研究所客員研究員、東京理科大学助教・講師を経て現職
/東京都出身

専門は水や熱の収支から気象を把握する水文気象学

専門は水や熱の収支から気象を把握する水文気象学という分野です。研究テーマの1つとして、都市の気象を地上で網羅的に計測する手法の開発を行っています。世界で都市の人口は増え続け、地表面の開発が進んでいます。都市の開発は猛暑や豪雨という極端な気象を助長する方向に作用することがあり、快適な都市づくりや防災の観点からそのモニタリングが必要です。計測器の開発が進み、取得できた観測データは唯一無二のものであり、新しい世界を見ているようで心が躍ります。

土木というと橋梁や地盤のイメージが強いが、人の暮らしを支える工学として扱う分野は多岐にわたる

大学の学部では、ものづくりが好きだったので土木工学を選択していました。土木というと橋梁や地盤のイメージが強いですが、人の暮らしを支える工学として扱う分野は多岐にわたり、その中で現在専門とする水文気象学に出会いました。特に都市が大気に与える影響を、実験や観測から検証していくプロセスが面白く、学位も都市気象の研究室で取得しています。学位取得後は、出現頻度の低い竜巻を上空の気象レーダーと地上の多点観測から解明する研究に携わり、竜巻の様子が上空と地上で異なることから、地上観測の必要性を知る機会となりました。

夢のために努力したこと

博士課程からスウェーデンの大学に進みましたが、Ph.D.取得までそれなりに苦労したと思います。今振り返ると、もう少し研究を俯瞰的に捉えて楽しみながら戦略的に進められたのではと考えたりしますが、当時は海外での新しい生活と目の前の研究テーマに必死だったように思います。学生を指導する側になり、気づけたことかもしれません。根気強く支えてくれた指導教官や先生方、あたたかい言葉をかけてくれた同僚や友達に今でも感謝しています。


ロールモデル

大切にしている言葉

スウェーデン留学時代によく耳にしたLagomという言葉、時々思い出しています。その直訳は、「ちょうどよい具合」ですが、「各々にとってのちょうどよさ、心地よさ」という意味で使われます。幸福度が高いことで有名なスウェーデンらしい言葉です。日々暮らしていく中で、無理をしないといけないときもありますが、頑張りすぎるとやがて心が荒みます。そうなる前に、物事を調整し、自分の心地よさを見つけるようにしています。

好きな時間

好きな時間の写真
2歳の子供がいるのですが、一緒に出かけながら会話するときが楽しいです。何事にも興味津々で、周りを見渡しながら「でんしゃきたね」などと一つ一つ丁寧に教えてくれます。子供が生まれてから、仕事や研究に割ける時間は減りましたが、一人の母として、一人の大学人として過ごす時間はどちらもかけがえのないものと思っています。上手く両立できているとは言えませんが、その時々のバランスを模索しながら、人生を楽しみたいと考えています。

研究をどのように社会に役立てていきたいですか?

開発した観測システムを用い、都市を含む地上における気象観測ビックデータベースを構築したいと思っています。地上は、建物や道路、広場や公園など場所ごとで構造や環境が異なり、ローカルな大気場に影響を与えています。今どこが異常に暑いのか、どこで災害に繋がるような大雨が降っているのか、という情報が得られれば、街づくりや防災に役立て、人々の安全で快適な暮らしを守れると期待しています。


若い人へのメッセージをお願いします。

進路に悩んだとき、興味を持てることが見つかると原動力となり、その後の努力につながりますが、見つからないこともあると思います。そのような場合は、自分に刺激を与えてくれる人たちがいる場所を目指すとよいかもしれません。少し背伸びをしたとしても、そのような環境で揉まれることで、道が開けることがあります。

掲載日:2025年3月5日