ヒトに寄り添えるシステムを創りたいです。
張 英夏 准教授
経歴
韓国梨花女子大学工学部卒業後、文部科学省国費外国人留学生として来日。
東京工業大学大学院情報理工学研究科修了。
東京工業大学助手、助教、東京都市大学講師を経て現職。
/大韓民国ソウル出身
ヒトが見えている「色」を計算機にも認識させる研究
「ヒトの視知覚」、中でも色知覚に興味があり、ヒトが見えている「色」を計算機にも認識させることを目標としています。測色計によって色の物理量を計測することはできますが、それだけでは私たちが認識している「色」をわかったことにはなりません。例えば色対比や色同化のように、周辺色の影響によって色の見えが変化することがあります。夕焼けの赤みがかったシーン中の白い車は、赤い光が反射されて車体が赤っぽくなっているはずなのに「白」と答えます。このように単純な物理値だけでは「色」を「正しく認識」したことになりません。目と脳で当然のように認識している「色」。計算機ですぐ再現できそうでできないところが大変魅力的です。
私たちは一体どうやって見たものを処理しているんだろう
はじめはCG (Computer Graphics)に憧れて研究室を選びました。しかし当時流行っていた、入力画像を絵画調に変換する研究を試してみると、期待通りの絵はなかなかできませんでした。ヒトなら当然こうする部分を計算機はああする、のような状態が続いたことから、私たちは一体どうやって見たものを処理しているんだろう、ヒトと計算機をすり合すことはできないかと興味がわきました。そこからヒトの見えに興味を持ち、現在に至っています。
夢のために努力したこと
大きな自分の夢を実現するために、何かすごく特別なことを実行した記憶はありません。その時々にできそうなことを飽きるまでやっていくということを繰り返してやってきました。長期的にコツコツ同じことをやっていくのが苦手、戦略を立てて効率よくやるのが苦手、という性格のせいもあると思います。持続力がない分やめてしまいたくなった場合には、どうしてそのような状況になったのかを考え、必要なら少しやり方を変えて別の方向から再チャレンジします。
趣味(日々の楽しみ?)
好きなもの
研究をどのように社会に役立てていきたいですか?
研究の最終的な目的はヒトと同じように「見る」システムを確立することなので、ヒトと共存し、ヒトとインタラクションするロボットやシステム全般に利用できるのではないと思います。機械的に大量の情報を正確に処理するのではなく、私と同じように感じたり見間違いしたり錯視を起こしたりするような、ヒトに寄り添えるシステムを創りたいです。
若い人へのメッセージをお願いします。
「他人の意見を聞き入れる素直さ」「がむしゃらに頑張る力」。この2つの力があれば何でもいい線まで行くと思います。アインシュタイン曰く、天才とは努力する凡才だそうです。だけど「がむしゃらに頑張る」には練習が必要です。興味があることをとことん極めてみる。今のうちにできる貴重な経験ですのでぜひやってみてください。
掲載日:2022年7月29日