人との繋がりは大切だと、日々、実感しています。

ロールモデル
理工学部 機械工学科
白木 尚人 教授

経歴
城北埼玉高等学校卒業、武蔵工業大学工学部機械工学科卒業。
武蔵工業大学大学院博士(後期)課程修了。
武蔵工業大学助手(1997年着任)を経て現職。
/埼玉県出身

安全・安心に機械を使用するためには欠かせない重要な研究

機械に用いられる材料の寿命について調べる金属疲労の研究をしています。機械の寿命を左右するのは材料であり、設計に必要な特性を満足する材料がなければ機械は設計できません。過去には遊園地のジェットコースターの車軸が折れる、鉄道車輌の台車に亀裂が入るなどの事故が起きていますが、これらの事故の大半は金属疲労によるものです。私は開発された材料の疲労試験を行い、何回負荷を繰り返しても破断しない限界(疲労限度)がどこにあるのかを探り、その試験データを設計に反映させることを目指しています。疲労試験は時間と労力がかかる地道な作業を伴いますが、安全・安心に機械を使用するためには欠かせない重要な研究です。

原因を追及する技術者・専門家の鋭い視点に感銘を受け、現在の研究へ

高校生の時、理系クラスに進み工業デザイナーの道を志しました。放課後、受験勉強のために美術の先生の元に通い、デッサンの基礎を学びました。大切なのは(美術)センスではなく、しっかりとした(デッサンの)基礎であることを教わりました。こちらの道は大学受験に失敗し閉ざされてしまいました。それと同時に1985年の8月に起きた「日航ジャンボ機墜落事故」は、高校生の私にとって大きな衝撃を受けました。事故の痛ましさはもちろんですが、残された墜落機の残骸から次々に明らかにされていく事故原因を追及する技術者・専門家の鋭い視点に感銘を受けました。現在、金属疲労の研究をしているのも、この事故に影響されたことによるものです。一方、デッサンの基礎は、担当科目である「製図」の授業で活かされています。

夢のために努力したこと

1997年4月に本学に助手として着任以来、どんな仕事にも全力を尽くしてきたつもりです。授業、研究はもちろんですが、それ以外の学内外の業務も同じ様に全力で取り組んできました。いつ役立つか分かりませんが、こうした経験がいつか自分もしくは誰かの役に立つと思ってやってきました。学内外で様々な課題で大きな壁にぶつかった時でも、こうした経験を元に乗り切ることが出来ていますし、自力で出来なくても、過去に一緒に仕事をした方達に大いに助けられています。自分一人の能力は、すぐに限界がきてしまいます。やはり人との繋がりは大切なのだと日々実感、感謝しながら今日も働いています。


ロールモデル

趣味・好きなもの

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競馬です。競馬歴は約35年になります。競馬ファンには、馬券ファンと馬ファンに分かれますが、私は断然「馬」ファンです。得意ジャンルは、(競馬の)「歴史」、「血統」、「海外情報」。1970年代から2000年にかけて出版された競馬に関する書籍は、200冊以上あります。自分自身では「白木競馬文庫」と呼んで、たまに読み返しています。最近は時間がないので、情報源は専らインターネットです。馬名の由来、有名な競走馬と有名人との意外な関係など、競馬以外の知識もどんどんついてきます。

大切にしているもの

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「天声人語ノート」です。2014年に御祝いで卒業生から万年筆を頂きました。普段使いもしていますが、「天声人語ノート」なるものがあることを知り、気に入った記事を切り取って保管しておき、時間があるときに書き写す様にしています。最初は半年に1冊ペースでしたが、最近はちょっとサボり気味です。書き写すことで記事の内容が頭に入りますし、この内容の一部は授業のネタになっています。書き写すのに約30分間、お気に入りの万年筆で一つ一つの文字を丁寧に書くことに集中する時間を持つことで、写し終わると頭の中がスッキリします。

研究をどのように社会に役立てていきたいですか?

ここ数年は鋳鉄(鋳物)を対象とした金属疲労の研究をしています。しばしば「鋳造って完成された技術ではないですか?」とか言われますが、金属疲労の観点からみても、まだまだ分からない事が多く、明らかにしなければならないことは沢山あります。材料に熱や力が加えられ、製品の形状にする部品や部材のことを「素形材」と言い、鋳造も代表的な素形材技術の一つです。日本の「素形材」技術を高い水準で維持していくためにも、研究や学会活動を通じて、鋳造業界のために貢献していきたいと思っています。


若い人へのメッセージをお願いします。

知識に貪欲になって欲しいと思います。自分自身のことを振り返ると、色々な事に興味を持って、それを突き詰めて調べることで、様々な分野のことを知ることができました。一見役に立たなそうな知識でも、数年経って、講演や講義を依頼されたり、専門外の方とお話しする時も、繋がりを作るきっかけになったりします。幸い、今はインターネットで様々なことを簡単に調べる事ができます。もう一つは、人との出会い、繋がりを大切にして欲しいと思います。私も今、こうして一人前?の事を言えるようになったのも、様々な仕事を通じて出会った方々が色々支えてくれたお陰です。私も人生折り返しに入りましたので、これまでの様に支えて貰うだけでなく、若い方々をサポートできる様に心がけていくつもりです。